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TRPG関連のお話

偶像

ゆにちゃんと楽満小話

 

 

 黄色い神様がいるんだ。別に俺は信仰してるわけじゃないけど、彼は絵を教えてくれたし、友人はかなり陶酔しているようだ。記憶を頼りにあの神をモチーフにして描くと、ぼんやりと蕩けた目で見る。自分の作品が評価されるのはいいことだな。かなりおどろおどろしい風体をしていたが、このような理由から良しとしている。
 ホームセンターでの珍しい機会からその友人とは何度か会い、今ではお互いの拠点を行き来するようになった。無防備な格好で一人来るものだから男としては見られていないのだろうかと思うといい気はしないが、友人はアトリエを楽しんで見ているようだし、まあ嫌われてはいないのだろう。何より俺がその新しい友人を気に入っている。
 所で友人というのは10くらいは離れた女性なのだが、俺はちょくちょく彼女をも絵のモデルにする。女体を描くのは美術においてそう珍しいことではないし、俺もよくやることだ。しかし身近な、しかもその肉を食べた女性をモデルにするのは、なんだか新鮮に感じられる。他の女性像よりも肉が柔らかく描けているような気がするし、心なしか血色も良く美しく見える。肉から薄らと形のわかる腰骨も良い造形になった。まあ勝手にモデルにしたとなると怒られかねないので、表立った場所には出していない。
 今日は彼女がアトリエに来る日だったので、昼食の準備と散らかった画材の片付けをしておいた。ビーフシチューのいい匂いと油絵の具の慣れた匂いが混ざってあまりいい匂いではなくなってしまったので、窓を開ける。
 さてあとは彼女が来るのを待つばかりである。絵の続きをしたいが片付けをした意味が無くなるので黙ってビーフシチューの味見をしようとした所で

「楽満さん? ……やっと気付いたねえ」
「うおっ」
「いい匂いする〜」
 いきなり背後から現れた(彼女曰く俺が気付かなかっただけらしい)その人が、俺の手からおたまを掻っ攫って味見をする。ああ、唇が鉄製のおたまに当たるせいでその柔らかさが強調されてしまった。絵が捗ってしまう…
「荷物あっちに置いていい?」
「絵の具で汚れなさそうな所に置いてくれ」
 努めて平静を保った声で返したつもりだが、果たして彼女には伝わってしまっただろうか。正直今すぐ描きかけの彼女の絵に取り掛かりたい。できないならスケッチだけでもしたい。写真は破きかねないから駄目だ。
「なぁーに描いてるのー」
「うおっ!!?」
「……唇? なんで??」
「絵の練習だ。習慣化しててな」
「熱心だねぇ」

 ……いつの間にかクロッキー帳を出していたようだった。何だか恥ずかしい。