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TRPG関連のお話

CoC:江崎結理のその後

『スワンプマンは誰だ?』をする前のセッションの話

シナリオ:黒柱の王

 

 

 

 

 

 ボクが次に起きた時には、心臓の音が平然と戻っていた。
 身体の異様な冷えも治まって、怪我もきちんと治療されて寝かされていた。悪夢を見ていた気分だったけれど、この怪我とボクの記憶が決して夢じゃないと訴えている。
 ボクらは確かに命からがら帰ることができたけど、菊池さんは死んでしまった。伊織さんも、事の顛末を伺う前に死んでしまった。ボクらだって死んでもおかしくはなかったはずなんだ。
 何も事実を知ることもないまま、ボクは白い天井を見上げている。

 ボクと怪しげなおじさん(おねーちゃんが変になった理由みたいだから許さない)は割と怪我が少なかったと思う。というかおじさんは怪我一つなかった気がする。けれどおねーちゃんやお医者の先生、しゅーちゃんはボクよりも起きるのが遅かった。天才のボクでも学んでいないことは分からないけれど、ボクより痛い目にあったのだろうということくらいは分かる。ボクがそうならなかったのは運が味方してくれたのと、しゅーちゃんが庇ってくれたからというだけなんだろう。
 テレビで聞いた話によれば、伊織さんは行方不明扱いとなったらしい。警察がいくら調査しようとはっきりした事実は分からないと思うから、きっと迷宮入りになるのだろう。香織さんには悪いことをしてしまったかもしれない、今度謝りに行ってみようかと思う。
 本を読んだおじさんになら分かることなのかもしれないけれど、結局どうしてこんなことに巻き込まれたのかはちっとも分からなかった。もしや伊織さんに何か特別な事情があったのかもしれないけど、これは正当防衛というやつだからボクらは悪くない。理不尽な死なんてボクは受け入れられない。
 「ボク、おねーちゃんとしゅーちゃんに会いに帰ってきただけなんだけどなあ」
 何となしぼやいた台詞もみんな寝てたから聞こえてない。

 *

 東京はいつも賑やかだけど、おねーちゃんやしゅーちゃんと一緒にいた時の賑やかさとは違う。何ヶ月かぶりに帰って、東京に戻ってから思うのはそれだった。なんというか、賑やかというよりは騒がしい。ボクはその街の片隅で、ご飯を食べる為に探偵業を営んでいる。
 「次はいつ帰ろうかなー、お土産もちゃんと用意しないと」
 あんなことがあってショックじゃない訳はないけど、案外人間は丈夫に出来ている。普通に仕事をして、たまにおねーちゃんと連絡を取る。帰る前と同じ、そこそこに平和な日々を過ごしている。
 あれからボクも少しは丈夫にならないものかと色々ネットで調べたけれど、どれもあまり効果はなさそうだったので早々やめてしまった。いくらボクが天才と言えど向き不向きというものがある。それにわざわざ逆らおうなんて馬鹿な真似をボクがする必要もない。
 そんなこんな考えている間にも毎日メールが止まないので、これは早く帰った方がいいらしい。探偵業だって暇じゃないんだけど二人はそんなこと考えもしないんだろうな、全くしょうがないんだから。
 優しくて勇敢で天才のこのボクが直々に足を運んであげるしか、通知音を途切れさせる方法なんてないかな!